刑事事件で弁護士に依頼するタイミング
1 できる限り早期に
刑事事件で逮捕された場合(身柄事件)や、逮捕されなくても事件として警察官から取調べのための出頭要請を受けた場合(在宅事件)、結論から申し上げますと、どちらのケースでも、できる限り早期に弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
2 具体的にどの段階で依頼すればいいの?
⑴ 在宅事件の場合
警察官から任意に出頭するように電話がかかって来た場合や、一度逮捕された後に釈放された場合、在宅事件となり、通常通りの日常生活を送りながら、刑事手続きが行われることになります。
この場合、まずは弁護士に速やかにコンタクトを取り、迷わずに相談に行きましょう。
在宅事件の場合も、警察から検察庁への不送致となる場合はごく稀で、ほとんどの事件で送致されますから、できるだけ速やかに弁護士に相談して、アドバイスを受け、できれば警察官による捜査段階で弁護士を選任しておくことが得策といえるでしょう。
検察庁に送致されてから弁護士に依頼するというのは、処分の動向を見てから依頼しているように見受けられかねず、心証がよくありません。
真摯に取り組んでいる姿勢を示すためにも、警察官の捜査の初期段階から弁護士を選任しておくべきです。
もっとも、初犯で事案がごく軽微な事案では、弁護士に依頼しなくても、不起訴となるケースはあります。
ただ、そのような見極めは難しいところがありますので、その点も含めて弁護士に相談して意見を聞いておくのが無難といえるでしょう。
⑵ 身柄事件の場合
通常、⒜警察官による逮捕・取調べ、⒝翌日の検察官取調べと勾留請求、⒞その翌日の裁判官の勾留質問・勾留決定、⒟勾留(まずは10日間、最長で10日間の延長)と進みます。
⒜の逮捕後、すぐに弁護士に依頼しておけば、⒝の検察官の勾留請求や、⒞の裁判官の勾留決定に意見書を出すことが可能となり、これにより、確率は高くないですが、稀に勾留が阻止されることがあります。
よって、この身柄拘束時に弁護士に依頼しておくに越したことはありません。
3 早期に弁護士に依頼するとどんなメリットがあるの?
⑴ 精神的なサポート、取調べのアドバイスを行ってくれる
在宅事件・身柄事件を問わず、警察官から呼び出しを受けたり、逮捕されたりした場合、おそらく、被疑者の方は、相当な精神的なダメージを受けられていることと思います。
このような場合、弁護士に依頼しておけば、今後の手続きの流れ、取調べにはどのように対応すべきなのか等を、具体的にアドバイスを行ってくれます。
特に、逮捕されている場合には、環境的な圧迫・閉塞感から、被疑者は、警察官の取調べに対して委縮してしまい、思わぬ不利益な供述を行ってしまうことも珍しくありません。
そのような場合でも、弁護士に依頼して、取調べの心構えなどのアドバイスを受けておけば、落ち着いて対応することができます。
⑵ 事件内容に応じた手続きの流れ・量刑の目安を早期に知ることができる
弁護士に早期に依頼しておけば、弁護士は刑事手続きのプロですから、事件やその内容に応じた、手続きの流れ、量刑の目安(不起訴となるのか、略式手続きにより罰金刑となるのか、公判請求されて正式な裁判となるのか、その場合執行猶予を付けることが可能なのか等)を早期に知ることが可能となります。
⑶ 早期の示談交渉が可能となる
刑事事件の場合は、被害者と示談交渉を行い、示談書に「刑事処罰を求めない」という文言(宥恕の文言)をいただくことができた場合、検察官により、多くの罪で不起訴処分が下されます。
また、たとえ起訴されることがあっても、量刑の減軽や、執行猶予判決になる等、相当の刑の減軽が図られます。
特に、身柄事件の場合は、逮捕されてから起訴されるまでの23日間に、示談できるか否かが、起訴・不起訴のキーポイントとなり、示談できれば多くの事件で不起訴となり釈放されます。
しかし、23日間を過ぎてしまうと、起訴されてしまい、裁判の期日が決められ、無罪とならない限り、通常はよくても執行猶予判決にとどまってしまいます。
したがって、示談交渉にあたる期間をできるだけ弁護士に確保させる意味からも、23日という限られた時間を1日でも多く弁護士に与えるために、できるだけ速やかに早期に弁護士に依頼することが必要です。
⑷ 有利な証拠の収集が可能となる
弁護士に依頼することにより、事件を無罪・不起訴とするために必要な証拠を一緒に検討することが可能となります。
その後、それに基づいて、弁護士が証拠の収集にあたることが可能となります。
弁護士は、その証拠をもとに、検察官に対し、無罪の主張や不起訴を求める等の交渉を行うことが可能となります。
誤認逮捕や冤罪事件の場合、これにより起訴前の勾留段階で、早期釈放が可能となることも少なくありません。
4 弁護士に早めにご相談ください
上記に述べましたように、刑事事件においては、その道のプロである弁護士に1日も早く相談し、依頼するのが得策といえるでしょう。
ご自身でいろいろと悩まれる前に、信頼できる弁護士を探し、1日も早く交渉の任にあたってもらいましょう。
刑事事件の弁護士費用
1 国選弁護の費用
刑事事件の弁護士費用は、国に弁護人を付けてもらう国選弁護にするか、ご自身で弁護人を依頼する私選弁護にするかによって異なります。
国選弁護の場合には、弁護士費用の基準が定められており、それに基づいて法テラスから弁護士費用が支払われます。
また、国選弁護の場合は、被疑者や被告人に資力がないことが通常ですので、弁護士費用を被疑者や被告人自身が支払うことは通常ありません。
2 私選弁護の費用
私選弁護では、依頼者と弁護士との契約によって費用が決められます。
支払いは、依頼者ご自身がすることになります。
その際に支払う料金について、以下説明します。
なお、弁護士に実際に相談することで、おおよその費用を聞くことができるため、弁護士費用でお悩みである場合には、まずは一度相談してみることをおすすめします。
また、弁護士事務所のホームページで弁護士費用の目安を掲載しているところもあります。
相談される弁護士を探す際にご参考にされるとよろしいかと思います。
3 法律相談料
まず、依頼者が弁護士に相談する際に、法律相談料がかかることがあります。
その場合、法律相談料は、30分または1時間単位で金額を決められることが多いように思われます。
当法人では、初回の相談をしやすくするために、初回30分の相談料を原則無料としています。
4 依頼後の費用
依頼後の費用としては、着手金や報酬金、実費などがあります。
なお当法人の費用については「費用」ページでご確認いただけます。
⑴ 着手金
着手金は、初めにまとめて金額を定める場合もあれば、起訴前と起訴後に別々に金額を定める場合もあります。
一般的には、相談内容から想定される事件の難易度等に照らし、目安となる金額が定められていることが多いように思われます。
⑵ 報酬金
不起訴処分、無罪、略式請求、執行猶予付き判決など、刑事弁護により得られる結果ごとに報酬が定められていることが多いです。
また、勾留に対する準抗告や起訴後の保釈請求などによって早期の身柄釈放となった場合や、被害者との間で示談が成立した場合には、別に報酬を定めることが多いです。
なお、相当期間の実刑判決が見込まれるなど、見通しが厳しい事案の場合、着手金を高めに定める代わりに報酬を定めない方法も考えられます。
⑶ 実費
コピー代や郵送料、交通費など実際に発生した諸費用が実費になります。